@rabirgoです。
5月になったので今月の目標を色々考えたんですけど、1日3記事プラス週1回以上書評的なものを書いてみようと思いました。
一般的に、刊行された書物を読者に紹介する目的で論評や感想などを記す文芸評論の一形式
論評という言葉からイメージされるほど評価的なことは書けないと思いますが、本を読んで気づいたことなどをシェアしてみたいと思います。
1回目は「発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術」です。
どこかのブログで紹介されてて、発達障害に興味を持っていたので Kindle Unlimited で購読しました。
発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
本書は発達障害と診断されているらしい 借金玉さん が執筆された本です。
存じ上げませんでした。
Twitter 界隈では有名な方みたいですね。(出版されるぐらいだから、そりゃそうそうなんでしょうけど(^_^;))
発達障害とは
厚生労働省のページから引用します。
発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます
私のイメージとしては主に「注意欠如・多動性障害(ADHD)」ですね。
本にも書かれているように、忘れ物が多いとかよく物をなくすとか、いわゆる空気を読めないとか、そういうイメージです。
私の周囲にはあまりいませんが、以前職場で「悪気はなさそうだけど、指示したことを守ってくれないプロジェクトメンバー」がいて悩んでたところ、発達障害のことを知って、こういうことか!と腑に落ちた経験があります。
彼は「いいやつ」だったので、何とか理解しようとした結果でしたが、借金玉さんが本書で書かれているような発達障害の態度(肩で風切って歩く的な記述がどこかにありました)であれば理解しようとすることもなく、プロジェクトからは去ってもらってたと思います。
その意味では私は運が良かったのかもしれません。
発達障害に強い偏見を持つ前に発達障害のことを認識することができました。
目次
Amazon より引用します。
- 第1章 自分を変えるな、「道具」に頼れ 【仕事】
- 第2章 全ての会社は「部族」である 【人間関係】
- 第3章 朝起きられず、夜寝られないあなたへ【生活習慣】
- 第4章 厄介な友、「薬・酒」とどう付き合うか【依存】
- 第5章 僕が「うつの底」から抜け出した方法【生存】
1章と2章には、おそらく発達障害とは診断されないであろう私も参考になる「ハック」や言語化された概念が述べられていたので、ここで紹介したいと思います。
3章以降は主に発達障害の方へ向けたノウハウというか、自分が「うつ」になった時に読み返したくなるような内容でした。
この書評では割愛しますが、具体的な話が盛り込まれており、予防薬として非常に参考になる内容だったと思います。
「集約」「一覧性」「一手アクセス」(第1章)
タイトルの仕事術からイメージされる内容は1章にほぼ書かれているんじゃないかなと思います。
発達障害者の仕事における3原則
筆者は最初に発達障害者の仕事の原則として、3原則を述べています。
「集約」「一覧性」「一手アクセス」です。
もう少し踏み込むと、この3原則を踏まえた道具を選ぶことでしょうか。
自分の能力を高めるのではなく道具に頼った方が簡単と説いていて、この3原則を守るための道具が具体的に紹介されています。
「見えないものはないものと同じ」と表現されている感覚が、この原則に辿り着いているようです。
また、特に発達障害についてだと思いますが、「訓練してもできないことはできない」と認めることが社会適応への第一歩であると述べられています。
これは(おそらく発達障害とは診断されないであろう)私にも使えるライフハックだなと思います。
発達障害とは診断されない思われる自分に適用してみる
ほとんど物をなくしたりしない私ですが、なぜか Bluetooth イヤホンは既に十個近くなくしていると思います。
昨日も見つからず5分ほど探してしまい、結局 諦めました。
(余談ですけど、結構高かったのでちょっとショック。。そのうち出てくると期待はしていますが)
これは「集約」ができてないから無くしてしまうのだと思ってます。
移動の時に Bluetooth イヤホンを使って、バッグの特定のポケットにしまってるつもりが無意識に上着やズボンのポケットに入れたりして、どこかに転がっていくのでしょう。
また、「一覧性」「一手アクセス」については、自分自身はタスク管理の分野でできてないと言えそうです。
Dynalist , Workflowy や Asana、iOS の習慣化アプリ、カレンダーなど、多くの場所に分散してしまっていて、まだあまり機能していません。
このキーワードを元に、ワークフローを見直す必要がありそうだと考えてます。
具体的な道具も紹介されてます
なお道具については、カバン、バインダー、手帳、アイデアノート、本質ボックス、神棚ハック、クリーンスペース、名刺、など、筆者の経験を元に行き着いた商品や手順が紹介されていました。
今のところ紹介されていた道具をそのまま真似してみようというものはありませんでしたけど、考え方はとても参考になりました。
「部族」と表現された人間関係(第2章)
2章では、発達障害の方にとっての人間関係について述べられています。
発達障害あるある?突然コミュニティから追い出される原因は「見えない通貨」
筆者は、ある日突然相手が怒り出す、連絡を無視される、ブロックされる、という経験が何度もあり、その度にコミュニティをホップして暮らしてきたそうです。
本書ではその原因を、起業した経験などから「見えない通貨」という概念で語られています。
例えば、親切にしてもらったのにお礼を言わないことは、お礼を言うという「見えない通貨」が支払わなかったということであり、商品購入の対価を払わなかったのとのと同等の罪科に相当するのであろうと論じてます。
「人は与えたものに対価が支払われないと、怒る」という小見出しがついているように、対価を支払わなかった結果として、コミュニティから追い出される原因だったと結論づけているようです。
発達障害者はお礼を言わない…?
ここで「普通」なら「お礼言わないの?」と思うかもしれませんね。
筆者は「自分が人に親切にする場合は特段対価を期待せずに生きてきた」と言います。
つまり、自分は対価を求めてないのだから相手も求めてないであろう、だから自分もお礼を言う必要はない(他の人も同じようにお礼は不要と考えているであろう)という思考ですね。
実はそこがずれていて、相手はお礼という対価を(無意識にでも)求めているもので、筆者はそれを知らなかった、気づいてなかったので嫌われてきたと。
ここは面白いポイントかなと思いました。
私たちは多くの場合「お礼を言いましょう」と教育されてきて、私の場合はそれを受け入れてきたと思います。
しかし筆者は教育されなかったのか、もしくは何かの影響で別の考えを持つに至ったと考えられます。
私の想像では、例えば、映画や漫画のシーンで、親切にしてもお礼の言葉なんてと言いながら去るのがカッコいいみたいな価値観が実装されたなどでしょうか。
この辺りは本人すら覚えてない可能性がありますが、
先天的なものなのか(発達障害”だから”お礼が言えないのか)
後天的なものなのか(教育や環境によるものなのか)
後天的ならその理由(きっかけ)は何か
という点でとても興味深いと思いました。
なぜなら、姪の一人(5歳)が、「お礼言おうね」っていうと泣き出したりするんですよね。
「ありがとうって言うだけなのに何がそんなに嫌なんだろう?(泣くほどお礼を言うのを嫌がるのはなぜ?)」と思ったりするわけですが、もしかすると発達障害ということなのかもしれません。
(仕方ないので、お礼を言わないことを怒ったりはしてません)
「共感」が苦手なのは私にも共通すること
また興味深いといえば、私自身がコミュニケーションで悩んでいたことを言語化されていて、面白かった、勉強になった、と思えました。
いくつかあるのですが、大きなのは「共感」です。
筆者の「気持ちはわかりますというのが苦手」と同じです。
共感=”共感してなくても(分からなくても)共感する(同意を示す)” ということだと理解していて、それは嘘をつくということだ、という罪悪感があるからです。
特に仕事の愚痴のような話になると、今でこそ「そっかぁ、大変だね(相変わらず分かるとは言えない)」ぐらいの共感は示すようにしてますけど、以前は「それはこうなんじゃない?」なんて反論のようなことをしてました。
今思えば、意見の押し付けだったなと反省してます。
考えてみるとこれは、見えない通貨で説明できることかもしれません。
私は「お礼」という通貨のことは知っていて支払いしていたけど、「共感」という通貨のことは知らずに支払ってなかったと思います。
いや、知らなかったというよりは、先に述べた「共感できないことに共感を示すのは嘘をつくということだ」という考えから、支払い方法を間違っていたということかもしれません。
本書でいう「誰も幸せにしない誠実さ」を私なりに持っていて、それを表に出して失敗してきたと説明できる気がします。
本書には「共感」の仕方について筆者なりの答えが書かれていて、私もこれに乗っかってみようと思います。
その答えはぜひ本書を読んでいただきたいのですが、ぶっちゃけ適当なので(笑)、もしかすると「そんなこと??」と失望するかもしれませんが「そんなもの」なんだと思います。
気が楽になる感じはしますよ。
発達障害の逆は?
そういえば発達障害の逆はあるのか?と検索してみると「定型発達」というそうです。
また、発達障害の方から見た定型発達の人の「ここが変だよ定型発達」的な定義を作られているようです。
※医学上の病名でも、公式に定められた障害の名前でもありません、とありますのでご注意ください
このページのチェックリストを見ると、発達障害の方から見て「普通」「正しい」のような価値観を押し付けてくる定型発達の人を揶揄しているような内容ですね。
発達障害の方から見た(おそらく共感できない)特徴が書かれていて興味深いです。
さいごに
本書を読んだり、こうして書評を書いたりしながら掘り下げてみて感じたのは
発達障害の方は、まず発達障害の自覚がない事による人間としての劣等感(人より劣っていると自覚するということはあるが障害という自覚はない)に悩み、自覚後もどうやって定型発達がマジョリティである社会に「歩み寄る」のかと悩んでいそうに見えるということです。
そう考えると、定型発達者は発達障害者へ歩み寄っているのか?と思います。
定型発達である(診断は受けてないけどおそらく発達障害とは認められないであろうという意味)と自身が自覚して、発達障害の方のことを知って歩み寄ろうとする、という姿勢があると、より良いコミュニケーションを形成していけるのかなと感じました。
類書を読んだことがないですが、本書は発達障害の方の考え方が言語化されていて、発達障害の方の思考を想像しやすくなるという点で優れていると感じました。
私はタイトルの「発達障害者の仕事術」に惹かれて本書を手に取った面はありますが、
読後の感想としては、発達障害のことを知りたいとか、うまくコミュニケーションできない人がいるとか、自身のコミュニケーションに課題があるなと思ってらっしゃる方は読んでみてはいかがかなと思いました。
きっと、いろんなことに気づきが得られるのではないかと思います。